「検索してはいけない言葉」で認知度を上げた絵画「あたしはもうお嫁にいけません」だが、その作品に込められた意味や作者について詳しく知りたい人は多いのではないだろうか。
インターネット上では間違った解釈もしばしばあり、ただのいわくつきの恐怖画像として扱われることが多い。
当記事では、「あたしはもうお嫁にいけません」の作品、及び作者について紹介すると共に、作者が作品に込めた本当のメッセージなどについて解説している。
「あたしはもうお嫁にいけません」とは
「あたしはもうお嫁にいけません」とは、とある絵画のタイトルのことである。
その絵画は、赤と黒を基調とした女性の全身像が描かれており、そのインパクトからインターネットの掲示板で「恐怖画像」として認知度を大きく高めた。
また、恐ろしい写真や動画、ショッキングな事件などの検索ワードのまとめである「検索してはいけない言葉」として取り上げられていることが多い。
皆様私の絵のタイトル間違えてる方々多いですが、あの赤い首長い女の絵は「あたしはもうお嫁にいけません」ではなく「あたしはもう お嫁にはいけません」が正解です。細かくてすみませんけど。
— 立島夕子 Yuko Tatsushima (@Yuko_Tatsushima) August 14, 2012
絵画に描かれた女性の風貌
「あたしはもうお嫁にいけません」に描かれた不自然に首の長い女性は、目を大きく見開き、こちらを恨めしそうに睨みつけている。
そんな狂気的な風貌には、何かしらのネガティブなメッセージ性を感じさせるものがある。
女性の風貌に加え、全体的に赤色と黒色で荒々しいタッチの作品であるため、どこか鬱々として重苦しい雰囲気を感じさせる。
「あたしはもうお嫁にいけません」は1999年9月29日に制作された絵画で、サイズは縦180cm×横90cmとほぼ等身大の人物画である。
実際の作品は、作者である立島夕子氏の公式サイト「立島夕子の地下要塞」で閲覧することができる。
「あたしはもうお嫁にいけません」にまつわる噂や間違った解説
「あたしはもうお嫁にいけません」は非常にインパクトが強く、作者の何かしらのメッセージを感じる作風だ。そのせいもあってか、インターネット上では様々な考察が飛び交っている。
- 精神を病んだ人が亡くなる直前に描いた絵
- 死刑囚が描いた絵
- 見たらなぜか眩暈が起こる絵
などなど。
とにかく、絵画のインパクトだけがインターネット上で独り歩きしてしまい、作品に込められた作者の本当のメッセージがなかなか人々に伝わらずにいた。
TBSのテレビ放送の「検索してはいけない言葉」を主題として取り上げた番組でも「あたしはもうお嫁にいけません」について触れられた。
しかし「見たらなぜか眩暈が起こる絵」といったような根も葉もない紹介の仕方をされてしまい、人々の認識の誤りに拍車がかかってしまった。
このあと深夜0時18分からは『検索してはいけない2』。インターネット世界の噂話。嘘か真か決めるのはあなただ! “禁断の検索してはいけないワード”を女子だけで紹介するオカルト女子会番組が、パワーアップしてのまさかの第2弾! #tbs
— TBS (@tbs_pr) July 10, 2014
TVで、立島夕子さんの作品が、
— サユコ (@sayucolate) August 17, 2014
“見たらなぜか眩暈がおこる絵”として紹介されていた
「わたしはもうお嫁にいけません」
“この絵は全ての性犯罪に対する私の決死の反逆の絵です”
どうして立島さんも、廃墟も、オカルト扱いするの?綺麗なのに pic.twitter.com/lvRnjRgA8C
「あたしはもうお嫁にいけません」の真実
「あたしはもうお嫁にいけません」の絵に込められた本当のメッセージは次の通りだ。
- 全ての性犯罪への反逆
- 反戦争・反徴兵制
「あたしはもうお嫁にいけません」は、作者である立島夕子氏の過去の性的被害のトラウマを作品として昇華したもので、性犯罪への反逆のメッセージが込められている。
絵画に描かれた女性の狂気的な表情、はだけた衣服、そして何より「あたしはもう お嫁にはいけません」というタイトルから納得のいく人も多いのではないだろうか。
なんかまたガセネタ出回ってるので本当の事書いておきますね。絵画「あたしはもう お嫁にはいけません」を描いたのはこの私です。まだ生きてます。あの絵は強姦と強姦未遂とストーカ−に遭った私の苦しみを描いた絵です。別に過去の事私は隠してないので、この話は誰にでも聞かれたら答えます。
— 立島夕子 Yuko Tatsushima (@Yuko_Tatsushima) April 21, 2012
また、他にも戦争や徴兵制への反対のメッセージも込められているそうだ。
ご存知の方々あまりいらっしゃらないと思うけど、私の初期の作品「あたしはもう お嫁にはいけません」は反徴兵制の絵でもあるのですよ。私はもうずっと昔から戦争が大嫌いな人間なのですよ。
— 立島夕子 Yuko Tatsushima (@Yuko_Tatsushima) November 16, 2013
「あたしはもうお嫁にいけません」の作者
「あたしはもうお嫁にいけません」の作者は「立島夕子(たつしまゆうこ)」氏だ。
立島夕子氏は画家だけではなく、人形作家としての創作活動を行っているアーティストである。
過去に性的被害の数々を経験しており、当記事で取り上げている「あたしはもう お嫁にはいけません」のような性犯罪への反逆の意図を作品で伝えているという。
また、立島夕子氏は広島県出身であり、幼少期に周囲に被爆者が多かったことや、原爆について図書館にこもって調べていたこともあって反戦争・反徴兵制のメッセージが込められた作品もいくつか手掛けている。
「野崎コンビーフ(梶谷令)」氏の作品とは無関係
「あたしはもうお嫁にいけません」と同じように、「検索してはいけない言葉」で取り上げられている絵画に「野崎コンビーフ(梶谷令)」氏の作品がある。
両者の作風が似ていることから同じ作者と認識されることがあるが、これは全くの誤解である。
立島夕子氏や野崎コンビーフこと梶谷令氏の作風は、アウトサイダーアートとして扱われることが多い。
「あたしはもうお嫁にいけません」のような独特で、退廃的な作風が気に入った人はアウトサイダーアートで調べてみては如何だろうか。
「あたしはもうお嫁にいけません」をかわいく描くミームも
怖い、不気味とされる絵画「あたしはもうお嫁にいけません」だが、「逆にかわいくしてしまおう」というインターネット・ミームが存在する。
例えば、イラスト投稿サイトのpixivでは次のような二次創作が存在する。
恐怖画像として扱われる絵画や写真には、しばしばこのようにかわいく描かれる二次創作だったり、コラージュ画像が存在する。
あたしはもうお嫁にいけません:まとめ
- 「あたしはもうお嫁にいけません」とは、立島夕子氏の絵画作品
- 作品には、性犯罪への反逆意思や反戦争・反徴兵制度のメッセージが込められている
- 野崎コンビーフこと梶谷令氏の作品と作風が似ているが全く別の作者
絵画作品は、作風のインパクトがあまりにも強いと画像だけがインターネットで独り歩きしてしまい、作者の意図とは全く異なる解釈が生まれることがしばしばある。
「あたしはもうお嫁にいけません」も同様で、様々な解釈が飛び交っている。が、作者が本当に伝えたいメッセージとは大きく異なる点が多い。
アート作品が人々に広まって、より多くの人の目に留まることは喜ばしいことだが、作者が意図しない間違った解釈がされてしまうのは考えものである。
作者の立島夕子氏の作品は、当記事で紹介している「あたしはもうお嫁にいけません」に限らず、戦争など人々が抱える闇に対して強いメッセージが込められている。
「あたしはもうお嫁にいけません」の作風に惹かれた人は、立島夕子氏の他の絵画作品も鑑賞してみては如何だろうか。